昨日手紙を出した
親愛なる友と兄姉と家族に出したんだ
最後のマドリッド報告だ
1ヵ月後にはパリへ行ってしまうからからな
ちゃんと報告しとかんといけないからな
あとまだ残ってるのがあるけど、まぁそのうち出せんだろうし
昨日も参ったなぁ
また工事してやがんの
しかもオレの部屋をよ
でも昨日は、昼間にバイト来てくれって言われてたから行ったんだ
でも、やっぱいいって言われてしまった
だから行くとこなくて困ってたんだ
仕方ないから佐伯祐三の本を持って、また川のほとりに行って読んでたよ
まったく、相変わらず自分のスペースがないぜ
イヤだよぉ、もぉ
まぁ、とりあえず寒空の下、本を読むことにした
この人オレと似てる部分がいくつかあった
学生時代野球部で
普段は物静かだけど
酒を飲むと荒々しくなって
しかも、オレがいつも口にしていた30まで生きれりゃいい
いい絵が1枚描けたらもう死んでもいいってことを
アーティストなんて、そんなもんでいいんじゃないかな
別に人の役にたってるわけじゃないし
あまり長生きしてもねー
でも、オレと佐伯祐三の違いは絵の量だ
佐伯はパリで100枚以上
オレはマドリッドで半年で10枚
決定的に違う
まぁ、絵柄も違うけど
あの集中力はハンパじゃないと思う
いい顔
いい瞳してたもんな、佐伯は
情熱もまったく違うんだろうな
オレまったくやる気ねぇもんな
ただ単に放浪しに来たわけじゃないんだけどよ
まぁいいかな
やる気ねぇんなら何も言わないよ、もう
あぁ貧乏はイヤだ
貧乏はイヤだ
パリに行ったら描けるかな
どうかな?
まぁ、描く環境ができてるから描けるかもしれんな
でも寒いだろうな
もっと温かい場所でゆっくり描きたいな
一流の画家になりたいな
そのためには描かなくちゃ
描いて描いて描きまくんなくちゃ
仕事もしなくちゃな
金ないしな
マイナス面ばかりだな
何やってんだろ
オレ何しに来たんだろ
オレ泣きたくなるよ
むなしいよ
生活してる感じしねぇもんな
まいったよ
本当まいったよ
ここまで絵と離れてしまう環境だなんて
描かなくちゃな
描かなくちゃ30才超えちまうぞ
もう残り少ないんだから
いい作品生み出そうよ
絵描くの好きなんだべ
自分の好きな絵を描きたい絵を描こうよ